経営者の眠れぬ夜のために 『会社という迷宮』
6月 27, 2023
ボストンコンサルティンググループなど複数の会社で経営コンサルタントとして活躍された石井 光太郎さんの本です。(株)コーポレイトディレクション(CDI)設立にも参画されているので、経営共創基盤の冨山さんともつながりが深そうです。なんといってもタイトルからしてユニーク且つ本質的なオーラを感じたので、購入してみました。
本書はタイトルの印象通り、非常に本質的で示唆に富むものでした。よくあるビジネス本にあるノウハウ的な話はなく、会社とは?経営とは?、経営者とは?といった問いに著者があらゆる経験から紡ぎだしたであろう言葉が綴られています。資本主義社会における数字偏重の経営計画や安易なM&Aに対する批判的考え方など、最近の世の中の風潮を問い直して本質的な言葉としてアウトプットされています。
特に印象に残ったのは、経営者の主観に関する記述です。私は創業者兼経営者なのでより共感したのかもしれませんが、経営者の主観が大切であるということが強調されており、とても腹落ちしました。会社の創業は、創業者の主観的な世界に基づいて始まっており、そこに強い価値観があるからこそ、共感する仲間が集まり社会も後を追ってくる。言われてみれば当たり前のように感じることですが、これはとても難しいことだと思います。特にサラリーマン経営者にとっては、困難を極めるはずです。
今年読んだビジネス書の中で、最も印象に残り、最も良かった本だと思います。あらゆるビジネスパーソンにおすすめできる本ですが、特に創業者、経営者、経営コンサルタントの方々に読んでいただきたいです。
以下、印象に残った内容とコメント。
●経営者として本当に恥ずべきことは、古い、最新事例を知らないとかではなく、社会に対して、もしくは社内外に対して、信念をもってさらけ出せる自身の主観、ステークホルダーをまとめる力強い主観を待ち合わせていないということなのである。
●良い会社とはなんなのか。法人格としての主観、経営者はそれを体現する者として強靭な主観を抱いていなければならないのである。それがないから客観に逃げ込む。数字、利益を基準にする。
●できるかどうかわからないことに、あえて既存の枠をはみだしても挑むとき、経営者の支えになるのは、やるべきことをやっているのだ、という自信と自負に他ならないであろう。人間としてそれがよいと信じられるかどうかであるに違いない。それが、社会的存在としての会社自身の主観であり、経営者自身の主観である。
●無思想、ポピュリズムに経営者が落ちてしまっているようにみえる。その夢から覚め、人間として心底愉快な経営を、経営者がその手に取り戻すことを願ってやまない。
➡ とても刺さりました。個人的な考え方と重なる点が多く、とにかく痺れました。唸りながら読む感じでした。そもそもなぜ会社を創業したのか?自分たちの存在意義はなにか?経営者が大切にしたい主観、価値観は何なのか?それをどのように会社や事業で表現しているのか?と。日々の業務に忙殺される時があっても、本質的な問いに対する答えとしての日々があるよう、振り返り考え続けるようにしたいと思います。主観で、楽しく、表現し、発信していきたいと思います。