会社の過去、現在、未来をつなぐ『理念経営2.0』
7月 7, 2023
P&Gでマーケティング、ソニーで新規事業創出プログラム立ち上げなどに関わった後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を創業された佐宗邦威さんの本です。常日頃、ビジョン、ミッション、バリューの大切さを意識して過ごしているので、それらに関わる本は一通り読んでみたいと思うので購入しました。
本書はビジョン、ミッション、バリュー、そしていま流行りのパーパスについて、とても分かりやすく解説してあります。後半では、理念をいかに組織に伝えていくのか、理念を体現する文化づくりをするのか、理念を支えるエコシステムを構築するのかについて、佐宗さん独自の知見が豊富に盛り込まれた方法論やフレームワークを紹介しています。
特に印象に残ったのは、「Historyから会社に埋蔵された原点を掘り起こす」ことの重要性について書かれた箇所です。会社の歴史を重要な経営資源と位置付けて、そこから抽出したエッセンスを現代に合わせたストーリーにすることで、現代を生きる社員にとって自分事化していくことができると述べられています。老舗企業が多い地方企業では、2代目や3代目経営者が多いため、このプロセスを実践して次の世代につなげていくことがとても大切だと感じました。
様々な本で理念について記載はありますが、ここまで分かりやすく実用的な本は無かったと思います。事業責任者レベルのビジネスパーソン、経営者、経営コンサルタントの方々におすすめですが、最もこの本を必要としているのはサラリーマン経営者と後継ぎ経営者だと思います。
以下、印象に残った内容とコメント。
● バリューの見つけ方は、あなたの組織における最高の体験から始める。あなたの組織における最高の体験はなんですか?その際にどのような行動をしましたかその行動を選んだのはどんなことを大事にしているからでしょうか。逆にネガティブポイントから考えることもできる。過去の経験で許せなかった事は何か反対を押し切って。でも変わった事は何かダサイからしたくない事は何か。
➡ いまIORI STAYのバリューをチームで議論しながら作成しているので、気になった内容。暗黙知として存在してきたこだわりを可視化してバリューを洗い出すことができた。一方で、過去だけではなく、将来こうありたいという背伸びしたバリューを入れることも大切かなと感じながら進めている。完成したらブログに書きたい。
● 未来志向だけでは抜けてしまう要素がある。それはその未来をなぜ私たちが目指す必要があるのか?である。
➡ このコメントは深いなと感じた。パーパスや意義といったことを日々の仕事で感じるには、過去、現在、未来がつながり、自分の中で腑に落ちることが大切だと思う。東京で働いていた時は、過去も未来も感じられなくてつらかった。東京のスタートアップは、未来しか見ていない。新しいサービスで未来へ向かってドライブして上場まで行きつく。過去がないから振り返らないように注意する必要がありそうなぐらい。それも魅力的なことなのかもだけど、地方、特に地元を持つ人にとっては、地元で起業するのは贅沢なことだと思う。過去、現在、未来がつながるので、自己が肯定されるような、歴史の中で役割を果たして次に繋げているような感覚を得られるから。ただ、地元で失敗したらすべてを失う感覚になるかもしれないという恐怖もあるかも。