新しい資本主義へ「鎌倉資本主義」

3月 23, 2022

面白法人カヤックの代表柳澤さんの本です。面白法人カヤックは鎌倉に本社をおく、デジタルを中心とした事業を展開している会社で、地域における新しい資本主義の形を模索している会社です。本書ではカヤックのこれまでの歩みを振り返りながら、将来目指している世界観などについて書かれています。

内容については、地域内での活動やカヤック独自のカルチャー(ex. プレゼン大会、採用や給与決定方法など)について詳細に書かれています。正直かなりオリジナルなので一企業が真似をするのは難しいと思うようなものが多いですが、創業メンバーのノリが反映されているんだということがよく伝わる内容だったので、結局は創業者のノリを素直に出していくことが正解だと思いました。

カヤックが提唱する地域資本主義は、地域経済資本 (財源や生産性) 、地域社会資本 (人とのつながり) 、地域環境資本(自然や文化)を指標化して、バランスよく増やしていくことで、多様で持続可能な成長を実現するという考え方で、GDPとう指標に代わるものとしています。この考え方自体は特に新しいものではないと思いますが、会社として、提唱するだけでなく、様々な活動を通じて実行に移されていることに、感銘を受けました。

さらに驚くことに、カヤックは上場していました!上場会社が地域資本主義を公表し、コミットしていることは意味があると思います。一方で、公表されている有価証券報告書を見ると、収益の大半はゲーム事業からとなっていました。事業自体を通じて地域課題や幸福度を上げる会社というよりは、事業は東京のIT会社と同じようにするけれど、それ以外のちいき資本主義に関する事業も大切だからやるよ!というスタンスの印象。

首都圏・資本主義圏で資本主義の世界で、稼げるビジネスをしてしっかりと成長する。効率性も重視する。利益も重視する。でも地域資本主義もやりたい。いい意味で資本主義を利用したいいとこどりしています。そして、鎌倉がベストなポジションだったと言えるのかもしれません。

鎌倉資本主義=地方資本主義と理解して読まれることが多いと思いますが、個人的には鎌倉=大都市圏の一部であり、首都圏であり地方という感覚はありません。鎌倉も東京から見れば地方、東京も世界から見れば地方都市と言えますが、鎌倉はロケーション的にも、人材・資本的にも、自然や文化などの資本的にも、相当恵まれているなので、どういう地域でどんな事業をしている会社の本なのかを意識して読む必要があると思いました。

鎌倉という非常に恵まれた地域で起きていることを、そのまま自分たちの地域に持ってくることはできません。カヤックが鎌倉を選んだのも、魅力的な地域だからという前提があると思います。また、こういった本は、ユニークで尖っているから本になり、話題になるわけで、まったくもってマス向けに参考になる話ではないと思います。それでも、尖った先の思考回路に触れ、自分や自分の会社、自分が住む地域に当てはめてみることで、気づきを得たり、視野を広げることに意味があると感じています。

総じて本書はとても勉強になりました。民間だけでなく公共で働く人たちにも参考になるストーリーであふれていると思います。

以下、印象に残った内容とコメント。

  • まちの食堂。社員食堂を町中に。日替りで、地元のシェフが、振る舞う。地元企業が会員に。
    ➡ とてもいいし、幸福度が上がりそう。サウナ付きのまちの社員食堂があると最高です。

  • まちの人事部。合同説明会、合同新人研修、リタイア人材のデータベース化。
    ➡ これやりたい!将来人材ビジネスで地域課題を解決したいと考えているので、参考になりました。

  • 多様性=面白い。
    ➡ この感覚はとても大切だと思うけれど、地方では多様性=めんどうが実態だと思います。これは東京でもそうですね。エリートはエリートの世界でしか過ごさないので、異なったバックグラウンドを持つ属性の人たちと触れ合う機会はありません。銀行で働いている時にこの点はよくわかりました。鎌倉は多様といえるのか?というとかなり怪しいですが、地方都市にあるよりはある面では多様ですがある面においては画一的だと思います。人口規模で数千から数万人規模の地方に来ると、保守的で画一的ですが、ある意味多様性にあふれています。何が言いたいかというと、カヤックのような会社が首都圏の鎌倉だけでなく、飛騨地域を含む日本中の地域に拠点を持つようになると世界が変わると思います。そうするには何が必要か?という視点でHIDAIIYOの事業を見つめなおしたいと思います。