顧客機転がすべて「たった一人の分析から事業は成長する」

5月 23, 2022

いま日本で最も人気のあるマーケターの一人、西口一希さんのノウハウが詰まったマーケティング本です。西口さんは、P&Gからキャリアをスタートさせた後、ロート製薬の役員に就任し、スキンケア商品の肌ラボを日本一の化粧水に。次は打って変わってベンチャー企業スマートニュースに参画し、大きな成果を残されました。大企業からベンチャーまで、第一線で活躍する中で確立した独自のマーケティング論を、展開されています。

この本の特徴であり、非常に面白かったポイントは「N1」というアイデアです。大量のデータをもとに平均的な顧客を想像するのではなく、たった一人の顧客と向き合い分析することで、アイデアを得ることの大切さが書いてあります。どうしても顧客データ分析をすると、数字で理解しようとしてしまうのが、ビジネスパーソンではないでしょうか。本来一人ひとりのお客さまが存在しおり、それぞれ全く異なる人物であるはずなのに、そこに平均的な人物がいるような感覚で議論をしてしまうことがあります。実はそんな顧客はどこにもいなかったという危険性があるということですね。

当社のビジネスはまだまだ小規模ということもあり、「一人ひとりのお客様と向き合うことを大切にしよう」と日々取り組んでいます。それでも、「誰が自分たちにとって一番のお客様なのか?」という問いは、とても難しいです。より良いビジネスにするべくアイデアを考えるときも、「それは誰にとって良くて、誰の満足度が上がるのか?」を理解できていないと、議論が前に進みません。そんな時、N1に対して向き合うことで、良いアイデアにたどり着くことがあります。僕自身の経験でも、「ヘビーリピーターの〇さんは喜ぶだろうか?」と問うことで、一気に解像度が上がる瞬間があったりしました。

個人的には、本書の趣旨からずれてしまうと思いますが、地域の商店街などのスモールビジネスにどう活かせるかという視点で数ページだけでもあると嬉しいと感じました。予算と人材が潤沢な大企業ではなく、小さな地方の商店で、西口さんだったらどう戦うかを聞いてみたいです。

最後まで一気に読めました。N1分析の重要性を説きながら、マスマーケティングにどうつなげるかまで詳細に書かれており、あらゆるビジネスの参考になると思います。マーケティングにかかわるすべての方にはおすすめです。

以下、印象に残った内容とコメント。

  • 異変に気付いてから分析して社内調整などすると新マーケティング戦略実行まで6か月はかかる。常にトラッキングを継続し何が有効なのか選択肢を持っておくことが大切だ
    ➡ 実際に常にトラッキングできている企業は少ないと思うので、大企業が組織変革もしながらマーケティングをするとどれだけ早くてもこのタイムスパン。ベンチャー企業や中小零細企業がスピード感を持って、しっかりとマーケティングプランを実施できれば大きな強みになると思いました。

  • ロート時代、寡占状態だった男性向けボディソープに、プロダクトアイデア=臭いをゼロにする、独自制=医薬部外品のボディケアで一気にNo.1を取った。銭湯でごしごし洗う人を見て、臭いを消したいというニーズを発見
    ➡ とても面白い。こういう成功体験がマーケターや経営者を次の挑戦へと向かわせるのではないか。

  • 競合のロイヤル顧客と比較し、競合の便益との違いを明確化。自社の独自性になる可能性が高いものを特定
    ➡ 時間をとって取り組みたいと思いました。自社の真の独自性がなんなのかを特定できればあらゆるマーケティング活動によい影響がありそうです。

  • デジタル化がますます進むと、プロダクトアイデアに圧倒的な独自性があるかどうかが成功を左右する
    ➡ デジタル化が進むとマーケティング活動はスマホデータベースで全自動化される可能性が高いため、差別化するポイントが限られてきそうです。その世界では、プロダクトをつくる段階で圧倒的な差別化を達成する設計ができていないと、消費者に認知されることなく埋もれてしまうのでしょう。あらゆる商品が出尽くした中で、圧倒的な独自性などあるのだろうか?とも同時に思います。独自性が一時的でなく長期に継続するものでないと強いビジネスにはなりません。当社としては、時間をかけて複数の強みを重ねていくことで、圧倒的な独自性を達成する戦略です。10年、20年単位の勝負をしていきたいです。