読書レビュー
-
3月 26, 2022
初めの一歩「地方起業の教科書」
地方で起業したい方向けの実践書として、ワタミで新規事業立ち上げなどを担当された中川直洋さんという方の本です。前半はマクロ的な人の流れについてや、地方にビジネスチャンスがあふれていることなどを説明し、後半では事業立ち上げに必要ないわゆる「いろは」的なことを平易な表現で書かれています。既に事業を立ち上げて数年経っている自分からすると、この本の内容は簡単すぎるというのが正直な感想でした。ひふみ投信の藤野さんや面白法人カヤックの柳沢さんが推薦しているので、本書の趣旨としてターゲットとする読者が起業すら考えていない学生や若者向けなのだろうと思います。高校生、大学生、社会人3年目までの方で、Uターン・Iターンに興味がある、地方起業の可能性について考えたい、地域協力隊で起業もしてみたい、という場合は、おすすめできます。ただ、本書だけを読んでも何かできるようになるわけではなく、ざっくり地方起業についてわかるというレベルにしかならないので、既に起業したいという強い思いのある方はスキップして、興味のある分野の起業家本を読む方がよほど勉強になると思います。以下、印象に残った内容とコメントです。著者が代表を務...
-
3月 25, 2022
西粟倉村のストーリー「ローカルベンチャー」
人口約1500人の岡山県・西粟倉村における著者である牧大輔さんの起業ストーリー本で、地域資源を活かした自社事業や行政とともに取り組んでいる事業などについて書かれています。牧さんは総合コンサルティング会社で働き地方自治体をサポートしている時にいくら分厚い計画を書いても地域が変わることはないと思い、プレーヤーになることを決意。1700人の村に移り住み、行政と連携しながら事業を拡大し、森林資源をいかした事業や移住支援事業、地域協力隊制度を使ったローカルベンチャースクールの運営など幅広く展開しています。僕自身の思いとも重なる部分もたくさんあって、外部からかかわるコンサルタントやベンチャー企業などはたくさんいるけど、地域にはプレーヤーがいないことが問題という指摘について強く同意しました。どれだけ魅力的な計画があっても実行に移すプレーヤーやそれを支える前向きな行政がないと物事は起きないし、軌道に乗らないと感じています。本書のケースは、自治体の強いサポートが継続的にあるから成り立っているケースの可能性があること、自治体の規模がかなり小規模なケースの成功例ということなどに留意した上で、地域活性化を目指...
-
3月 23, 2022
新しい資本主義へ「鎌倉資本主義」
面白法人カヤックの代表柳澤さんの本です。面白法人カヤックは鎌倉に本社をおく、デジタルを中心とした事業を展開している会社で、地域における新しい資本主義の形を模索している会社です。本書ではカヤックのこれまでの歩みを振り返りながら、将来目指している世界観などについて書かれています。内容については、地域内での活動やカヤック独自のカルチャー(ex. プレゼン大会、採用や給与決定方法など)について詳細に書かれています。正直かなりオリジナルなので一企業が真似をするのは難しいと思うようなものが多いですが、創業メンバーのノリが反映されているんだということがよく伝わる内容だったので、結局は創業者のノリを素直に出していくことが正解だと思いました。カヤックが提唱する地域資本主義は、地域経済資本 (財源や生産性) 、地域社会資本 (人とのつながり) 、地域環境資本(自然や文化)を指標化して、バランスよく増やしていくことで、多様で持続可能な成長を実現するという考え方で、GDPとう指標に代わるものとしています。この考え方自体は特に新しいものではないと思いますが、会社として、提唱するだけでなく、様々な活動を通じて実行に移され...