地域
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4月 3, 2022
日本型北欧社会「富山は日本のスウェーデン」
慶応大教授の井出さんによる富山研究本です。富山県が優れている点を歴史を紐解きながら解説する本で、富山県が豊かで住みやすい地域だと力説しています。持ち家率ナンバーワン、女性従業率ナンバーワン、三世代同居率全国5位、学力も高いなどと紹介し、舟橋村について転入超となっているホットスポットとして詳しく書かれています。飛騨地域は富山と地理的に近く、文化的・経済的交流もあるので、富山を身近に感じることができます。個人的にはライフスタイルの一部に富山が入っています。この本に書いてある豊かさは、飛騨に住みながら享受させてもらっている感覚があるので、肌感覚でわかる部分もありましたが、富山に行ったことがない方は一度行ってみてから読むと良いかも。タイトルが少しトリッキーで最後までしっくりこない部分はありましたが、井出さんの思想や主張を踏まえればなんとなくわかったという感じがしました。井出さんが横浜国立大学に勤務していた頃、僕の友人が複数ゼミ生だったので一度一緒に飲ませてもらったこともあります。教え子達も優秀で学者になっている人も多いです。まだまだメインストリームではないですが、少しずつ時代の流れは井出さん...
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3月 31, 2022
リノベーションまちづくり「熱海の軌跡」
衰退していた熱海をビジネスの力で再生に取り組んでいる市来さんのストーリー本。熱海生まれの著者はコンサルティング会社で働いていましたが、コンサルティングで人々を幸せにできているのかと疑問に持ち、大前研一さんが主宰するビジネススクールへ。Uターンして熱海の衰退をビジネスを通じて解決する道を探ります。地元の衰退をなんとかしたい、ビジネスの力で再生したいといった思いや、コワーキングスペース運営、創業支援などHIDAIIYOのストーリーやビジネスと似ている部分も多く、共感しながら読みました。地域再生系の本は実力以上に大きく見せようとするケースがよくあるのですが、市来さんの本は自然体。成功事例だけでなく、補助金に頼ったことによるイベントの失敗や、カフェの失敗についてもちゃんと書いていて好感が持てます。これはなぜかというと、おそらく、描いているビジョンが大きいからというのと、地域に根付いているからだと思います。ビジョンが小さいと自己中心的になってしまい、地域に根付いていない人物では周りが見えないので、自分ブランドのPRが先行してしまって知名度はあっても実態は、、、というケースがあったりします。リノベーション...
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3月 30, 2022
地方の生存戦略「地方消滅 創生戦略篇」
岩手県知事や総務大臣を務めた増田さん、株式会社経営共創基盤会長の冨山さんによる共著。政治と経営のプロが地方の消滅危機の実態とチャンスについて語っています。政治家の本は過去にいくつも読んできましたが、ふわっとした内容が多くなりがちです。しかしこの本は、富山さんという論客のおかげで、理論がしっかりとしていると感じました。GDPと雇用の7割を占めるローカル経済に、日本経済復活の可能性を見出している冨山さんの理論は筋が通っています。個人的には、富山さんのコメントが自社と照らし合わせながら読める部分も多く、特に地方発のイノベーションをどう生み出していくかという最終章が良かったです。一点欲をいえば、世界からの視点があると良いと思いました。インバウンドについて記載はありましたが、世界のローカルとの比較や事例についての言及があると満足度が高まった気がします。地域活性化に興味のある方におすすめできる本です。以下、印象に残った内容とコメント。地方の中核都市レベルに住む夫婦が共働きで500万円稼げる仕事をいかにつくるかが大切。新しいミドルクラスを作る。100-200万給与の仕事では駄目だが、観光業はそうなりがちなのが...
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3月 27, 2022
日本は終わってる?「2040年 おいしいニッポン」
ロングセラー『投資家が「お金」より大切にしていること』の著者で「ひふみ投信」で知られるレオス・キャピタルワークスの代表藤野さんの本です。最近たくさんのメディアで見ることが増え、考え方や地方への想い(富山出身)に共感することが多いので、本書を買ってみました。本書に書いてあることは、僕なりに一言でいうと、「日本は課題先進国=チャンス先進国」です。2040年というと、それまでに南海トラフや富士山噴火などがほぼ確実に起こると言われ、人口減少・高齢化が進み、GDPの規模も縮小していくことが予想されていて、悲観一色という感じでしょうか。藤野さんはそんな世間の認識に対して、一石を投じています。さらば悲観論!と。個人的には本書の内容が地方の事例に多くのページを割いていることが嬉しかったです。藤野さんの着眼点が新しいこともあると思いますが、地方の先進事例が紹介されています。普段から意識して地方ビジネスの情報収集をしている人にとっては、たぶん物足りないと思いますが、地域内でもやもやしている人や都心で働いている人には目から鱗の内容も多いのではと感じました。また、大企業に行くことを否定することなく、「大企業でもい...
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3月 23, 2022
新しい資本主義へ「鎌倉資本主義」
面白法人カヤックの代表柳澤さんの本です。面白法人カヤックは鎌倉に本社をおく、デジタルを中心とした事業を展開している会社で、地域における新しい資本主義の形を模索している会社です。本書ではカヤックのこれまでの歩みを振り返りながら、将来目指している世界観などについて書かれています。内容については、地域内での活動やカヤック独自のカルチャー(ex. プレゼン大会、採用や給与決定方法など)について詳細に書かれています。正直かなりオリジナルなので一企業が真似をするのは難しいと思うようなものが多いですが、創業メンバーのノリが反映されているんだということがよく伝わる内容だったので、結局は創業者のノリを素直に出していくことが正解だと思いました。カヤックが提唱する地域資本主義は、地域経済資本 (財源や生産性) 、地域社会資本 (人とのつながり) 、地域環境資本(自然や文化)を指標化して、バランスよく増やしていくことで、多様で持続可能な成長を実現するという考え方で、GDPとう指標に代わるものとしています。この考え方自体は特に新しいものではないと思いますが、会社として、提唱するだけでなく、様々な活動を通じて実行に移され...