# 読書レビュー
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8月 31, 2022
偉大な企業をつくる地図「ビジョナリーカンパニーZERO」ジム・コリンズ
世界的な超ロングセラーとなったビジョナリーカンパニーシリーズの最新版です。第一巻『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(Built to Last、ジェリー・ポラスとの共著)から始まり、全4巻になっています。著名な起業家が必ずおすすめする本の一つです。私は、第一巻は社会人時代から何度も何度も読みました。日本語で読んだ後に、さらに英語で読んでいたので、かなり頭に入っている本です。2-4巻は流し読み程度になったのもありますが、正直印象には残りませんでした。しかしこの最新刊は本当に素晴らしかったです。これまでのシリーズ全体からのエッセンスの盛り込みながらも、スタートアップや中小企業がどう成長するのかについて書かれているため、共感できる部分が多かったのだと思います。どうしても大企業の内容や事例が多くはなりますが、本のエッセンスから学べることや、励まされることも多く、スタートアップや中小企業の経営者に強くおすすめできる本です。ありすぎて三つに絞るのが大変でしたが、以下、印象に残った点とコメント。幸運も不運も等しく訪れる。しかし偉大な企業は幸運からより多くのリターンを得ていたのだ。どう活かすかだ。偉...
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8月 31, 2022
生涯創作者であるために変化し続ける「感動をつくれますか」 久石譲
いわずと知れた映画音楽の巨匠である久石譲さんの本です。ビジネス本ばかり読んでいるので、学びが少なくなっているなと感じていた中で、一流の考え方に触れようと読んでみることにしました。結果は、想像以上に勉強になりました。作品作りへの向き合い方や新しいアイデアの生み出し方など、経営に置き換えて想像するとビジネス本よりも得るものが多かったです。すべてのプロを目指す方々におすすめできる本です。個人的にはビジネス本から学びが少ないと感じている人には強くおすすめしたいと思います。以下、印象に残った点とコメント。優れたプロとは継続して自分の表現をしていける人のことである。二流でも一点に集中すれば一流に勝てる。短期的には。一流とは、ハイレベルな力を毎回発揮できることだ。➡ ビジネスマンも経営者も本当のプロとは継続的に結果を出しているということ。名経営者でも最後は倒産したりすることを考えると、会社においては一流をつないでいくことの難しさを感じる。決まった時間に起きて、食事をし、シャワーを浴びてから、決まった時間仕事をする。夜はお酒で精神を、ストレッチで身体をほぐす。➡ もっとルーティンをつくろう。安定的に成...
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8月 31, 2022
戦う起業家に向けたパンク哲学「Business For Punks」 James Watt
イギリスで最も売れているクラフトビール「BrewDog(ブリュードッグ)」の共同創業者による本です。300万円で始めたビジネスがどうやって急拡大し、倒産の危機を乗り越えながらも成功を収めるまでに至ったのかがかかれています。実はこの本を読んだのは随分と前なのですが、再度読み返してみました。起業当初に読んだのですが、今でも内容の過激さ、起業・ビジネスとは戦いだという前提で動いていること、独自の経営論は本当に多くの示唆を与えてくれます。日本はある意味恵まれており、競争も激しくないので、彼らのような動きをする会社は少ない気がします。同調圧力など一切気にせず、他人のアドバイスも一切無視して、自分が信じる世界を実現するための革命に命をかけるといった感じです。これから起業する人、起業したての人には、目線を上げてくれるポイントや新たな気づきがいくつもあると思います。ただ、内容が過激すぎるので、同じような経営を日本で実践するのは危険です。単純にまねをするのではなく、その本質、自分自身が本当に信じることを実践することがポイントなので、自分自身がパンクでなければパンクでない経営論があるはずです。経営とはどこまで行っ...
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8月 31, 2022
良い意思決定のために「Invent & Wander」 ジェフ・ベゾス
言わずと知れた世界的経営者、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏自らの言葉による初めての本です。過去の発言や、著述、インタビューなどを集めたもので、すべてジェフ・ベゾス氏自身の言葉で、その思考に触れることができます。自分の場合は、アマゾンのようなスケールする会社を目指していないけれど、その経営哲学からは学ぶことがあると思い購入しました。アマゾンの成長を支えてきた経営哲学やジェフ・ベゾスの行動原則は初めて聞くものではありませんが、非常に高いレベルでやり切ることはできないものばかりです。大組織になっても創業者のDay oneカルチャーが少なくともマネジメント層には浸透していることが強いのではないかと感じました。本の内容は実務的な話よりも哲学的なので、経営者の方やマネジャーレベルの方に特におすすめの本です。以下、印象に残った点とコメント。後戻りできない意思決定に時間をかけるべきだが、最後は体力勝負になってしまうことがある。現場で長く議論されていることは、上に上げるべきだ。意見が分かれることを意思決定するのがマネジャーの仕事であり、「この方向性でいく。反対の人もコミットしてくれ」と伝えるのだ。上司とし...
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8月 29, 2022
別解力こそ経営力「起業家の思考法」平尾丈
株式会社じげんの代表 平尾丈さんの本で、起業論について書かれています。平尾さんはリクルート入社後、新規事業を複数立ち上げた後、会社を設立し、社長に就任。30歳でマザーズ、35歳で東証一部上場、12期連続増収増益を達成している起業家です。圧倒的な成果を出し続けた平尾さんの別解力の解説はとても面白いものでした。別解力とは、「自分らしいやり方×優れたやり方×別のやり方」と定義されています。別解を持つことにより、圧倒的成果が出る、評価される、個性が出せる、自己肯定感が高まることで、仕事が楽しくなるという点は、とても共感しました。起業家に必要なものとして、発見力、別解力、実現力+失敗力+これらによる成長力が挙げられていました。特に失敗力が必要という点は印象に残りました。圧倒的な成果を残す人材は失敗もたくさんしていますが、そこから学び続けられる人は同じ失敗を繰り返さず成長し続けられるということ。最近失敗が少ない気がしていたので、心に響ました。一点、物足りなかったのは、平尾さんの個人的なストーリーや感情面があまり語られていなかったことです。おそらく平尾さんはとても論理的な方で起業論にフォーカスした本とい...
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8月 29, 2022
新たな観光ビジョン「この旅館をどう立て直すか」 瀬戸内デザイン会議
著名なデザイナーである原研哉さんを中心に設立された日本の「観光」という産業の未来について話し合う瀬戸内デザイン会議。「ものづくりから価値づくりへ」をスローガンに、観光業の未来について議論している本です。前半は知識人による提言。後半は厳島に実際に存在する旅館を立て直すプランを提案するケースステディという構成になっています。前半の知識人による提言は専門家の意見だけあって独自の切り口で建築や観光を語っており、実務というよりは哲学的な考え方に触れるという意味で楽しく読めました。後半のケーススタディは、3グループに分かれて提案をするのですが、HIDAIIYOとして日々取り組んでいることなので自分事として読め、実務的な観点から楽しめました。提案内容に関しては、旅館リニューアルによる富裕層誘致にフォーカスが当たっている内容という印象だったのですが、島の観光地としての全体戦略が語られ、その中で富裕層向け宿泊施設がどう位置付けられているのかという観点が欲しかったなと思いました。富裕層の集客は今後間違いなく力を入れるべき点ですが、将来それにかかわる人はほんの一握りです。観光客も量より質と言われていますが、ある...
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8月 29, 2022
認知がすべて「最強知名度のつくり方 西村誠司」
いま日本で勢いのある会社といえば、エクスコムグローバル社が頭に浮かぶ方も多いと思います。いもとのWifiと聞けば、知らない方は少ないのではないでしょうか。同社の代表 西村誠司さんの初の著書です。西村さんは名古屋市立大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社されました。 1995年、退社してインターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立され、社長に就任。いもとのWifi(海外用レンタル携帯電話事業)で事業を軌道に乗せることに成功させます。しかし待ち受けていたのは新型コロナウイルスによる売上消滅。ここであきらめずにもの凄い速さで「にしたんクリニック(PCR検査事業)」を立ち上げ、業績をV字回復させました。その軌跡、代表の経営哲学が詰まった本です。この本の特徴として、マーケターではなく経営者が語るマーケティング論ということです。マーケターが語るマーケティング本は論理展開が明確で、ほぼ間違いなく市場調査やマーケティングMIX(Product, Price, Place, Promotion)の重要性が書かれています。しかし西村代表は直感型の経営者(動物的嗅覚という感じかもしれません)で、理論よりも行動を...
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5月 23, 2022
顧客機転がすべて「たった一人の分析から事業は成長する」
いま日本で最も人気のあるマーケターの一人、西口一希さんのノウハウが詰まったマーケティング本です。西口さんは、P&Gからキャリアをスタートさせた後、ロート製薬の役員に就任し、スキンケア商品の肌ラボを日本一の化粧水に。次は打って変わってベンチャー企業スマートニュースに参画し、大きな成果を残されました。大企業からベンチャーまで、第一線で活躍する中で確立した独自のマーケティング論を、展開されています。この本の特徴であり、非常に面白かったポイントは「N1」というアイデアです。大量のデータをもとに平均的な顧客を想像するのではなく、たった一人の顧客と向き合い分析することで、アイデアを得ることの大切さが書いてあります。どうしても顧客データ分析をすると、数字で理解しようとしてしまうのが、ビジネスパーソンではないでしょうか。本来一人ひとりのお客さまが存在しおり、それぞれ全く異なる人物であるはずなのに、そこに平均的な人物がいるような感覚で議論をしてしまうことがあります。実はそんな顧客はどこにもいなかったという危険性があるということですね。当社のビジネスはまだまだ小規模ということもあり、「一人ひとりのお客様...
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4月 3, 2022
日本型北欧社会「富山は日本のスウェーデン」
慶応大教授の井出さんによる富山研究本です。富山県が優れている点を歴史を紐解きながら解説する本で、富山県が豊かで住みやすい地域だと力説しています。持ち家率ナンバーワン、女性従業率ナンバーワン、三世代同居率全国5位、学力も高いなどと紹介し、舟橋村について転入超となっているホットスポットとして詳しく書かれています。飛騨地域は富山と地理的に近く、文化的・経済的交流もあるので、富山を身近に感じることができます。個人的にはライフスタイルの一部に富山が入っています。この本に書いてある豊かさは、飛騨に住みながら享受させてもらっている感覚があるので、肌感覚でわかる部分もありましたが、富山に行ったことがない方は一度行ってみてから読むと良いかも。タイトルが少しトリッキーで最後までしっくりこない部分はありましたが、井出さんの思想や主張を踏まえればなんとなくわかったという感じがしました。井出さんが横浜国立大学に勤務していた頃、僕の友人が複数ゼミ生だったので一度一緒に飲ませてもらったこともあります。教え子達も優秀で学者になっている人も多いです。まだまだメインストリームではないですが、少しずつ時代の流れは井出さん...