ビジネス
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7月 7, 2023
会社の過去、現在、未来をつなぐ『理念経営2.0』
P&Gでマーケティング、ソニーで新規事業創出プログラム立ち上げなどに関わった後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を創業された佐宗邦威さんの本です。常日頃、ビジョン、ミッション、バリューの大切さを意識して過ごしているので、それらに関わる本は一通り読んでみたいと思うので購入しました。本書はビジョン、ミッション、バリュー、そしていま流行りのパーパスについて、とても分かりやすく解説してあります。後半では、理念をいかに組織に伝えていくのか、理念を体現する文化づくりをするのか、理念を支えるエコシステムを構築するのかについて、佐宗さん独自の知見が豊富に盛り込まれた方法論やフレームワークを紹介しています。特に印象に残ったのは、「Historyから会社に埋蔵された原点を掘り起こす」ことの重要性について書かれた箇所です。会社の歴史を重要な経営資源と位置付けて、そこから抽出したエッセンスを現代に合わせたストーリーにすることで、現代を生きる社員にとって自分事化していくことができると述べられています。老舗企業が多い地方企業では、2代目や3代目経営者が多いため、このプロセスを実践して次の世代につなげていくことがとても...
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6月 27, 2023
経営者の眠れぬ夜のために 『会社という迷宮』
ボストンコンサルティンググループなど複数の会社で経営コンサルタントとして活躍された石井 光太郎さんの本です。(株)コーポレイトディレクション(CDI)設立にも参画されているので、経営共創基盤の冨山さんともつながりが深そうです。なんといってもタイトルからしてユニーク且つ本質的なオーラを感じたので、購入してみました。本書はタイトルの印象通り、非常に本質的で示唆に富むものでした。よくあるビジネス本にあるノウハウ的な話はなく、会社とは?経営とは?、経営者とは?といった問いに著者があらゆる経験から紡ぎだしたであろう言葉が綴られています。資本主義社会における数字偏重の経営計画や安易なM&Aに対する批判的考え方など、最近の世の中の風潮を問い直して本質的な言葉としてアウトプットされています。特に印象に残ったのは、経営者の主観に関する記述です。私は創業者兼経営者なのでより共感したのかもしれませんが、経営者の主観が大切であるということが強調されており、とても腹落ちしました。会社の創業は、創業者の主観的な世界に基づいて始まっており、そこに強い価値観があるからこそ、共感する仲間が集まり社会も後を追ってくる。言われ...
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6月 21, 2023
江戸時代型モデルで気楽に暮らす? 2025年日本経済再生戦略
著者の冨山さんと成毛さんはビジネス界ではとても有名です。冨山さんは経営共創基盤(IGPI) IGPIグループ会長、成毛さんは元日本マイクロソフト代表取締役社長です。本書では日本がなぜ貧しくなったのか、それに対する処方箋について前半で説明されており、後半ではこれからの時代の生き方やマインドセットについて書かれています。本書では、明治以降に確立された日本の成功モデルとそれに紐づいた制度が機能不全を起こしており、昭和との決別が必要であることが強調されています。サラリーマンは、究極の自己責任社会がやってくる構造的衰退国家で働きながら、人生100年時代を充実して過ごす必要があると指摘。今後国や社会には期待することはできなくなるので、個人が自分の身を守ること、楽しく自分勝手に生きることで、幸福度の高い社会へ移行することが提唱されています。地方部の記述に関しては、1泊1人10万円のラグジュアリー価格帯の宿が地方部にほとんど存在しないので、そこにチャンスがあるとの記載もありました。飛騨地域もそうですが、高価格帯の宿が存在していません。中間から低価格帯がほとんどを占めており、競争に巻き込まれてしまっています。IORI STAY...
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6月 20, 2023
連続起業家の成功哲学 「シリコンバレー最重要思想家 ナヴァル・ラヴィカント」
ナヴァル・ラヴィカントはシリコンバレーのスタートアップ界におけるアイコン的存在。UBERやTWITTERなどへのエンジェル投資としても知られています。本書では、彼の哲学や人生の指針に関するインタビューやエッセイが収められており、個人の成長、時間の価値、意識の向上、富の定義など、幅広いテーマについて議論されています。正直、「シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント」という日本語タイトルにつられて購入しました。期待していたのは、会社経営や生き方の原理原則のような骨太の内容に出会えることでしたが、本書は組織よりも個人がどのように生きれば幸福な人生を過ごせるかという点にフォーカスして書かれていました。結果として、日々の習慣を見直す良いきっかけになりました。この本に書かれてあることは、どのように富を生み出すのか?最高の人生を歩むにはどうすれば良いか?についての具体的なマインドセットと方法論でした。大学生、社会人、経営者の方にもおすすめできる本です。以下、印象に残った内容とコメントです。ソフトウェアやメディアを作りながら効率的に時間を使い、レバレッジを活用しましょう。=> レバレッジを効かせること...
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8月 31, 2022
偉大な企業をつくる地図「ビジョナリーカンパニーZERO」ジム・コリンズ
世界的な超ロングセラーとなったビジョナリーカンパニーシリーズの最新版です。第一巻『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(Built to Last、ジェリー・ポラスとの共著)から始まり、全4巻になっています。著名な起業家が必ずおすすめする本の一つです。私は、第一巻は社会人時代から何度も何度も読みました。日本語で読んだ後に、さらに英語で読んでいたので、かなり頭に入っている本です。2-4巻は流し読み程度になったのもありますが、正直印象には残りませんでした。しかしこの最新刊は本当に素晴らしかったです。これまでのシリーズ全体からのエッセンスの盛り込みながらも、スタートアップや中小企業がどう成長するのかについて書かれているため、共感できる部分が多かったのだと思います。どうしても大企業の内容や事例が多くはなりますが、本のエッセンスから学べることや、励まされることも多く、スタートアップや中小企業の経営者に強くおすすめできる本です。ありすぎて三つに絞るのが大変でしたが、以下、印象に残った点とコメント。幸運も不運も等しく訪れる。しかし偉大な企業は幸運からより多くのリターンを得ていたのだ。どう活かすかだ。偉...
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8月 31, 2022
戦う起業家に向けたパンク哲学「Business For Punks」 James Watt
イギリスで最も売れているクラフトビール「BrewDog(ブリュードッグ)」の共同創業者による本です。300万円で始めたビジネスがどうやって急拡大し、倒産の危機を乗り越えながらも成功を収めるまでに至ったのかがかかれています。実はこの本を読んだのは随分と前なのですが、再度読み返してみました。起業当初に読んだのですが、今でも内容の過激さ、起業・ビジネスとは戦いだという前提で動いていること、独自の経営論は本当に多くの示唆を与えてくれます。日本はある意味恵まれており、競争も激しくないので、彼らのような動きをする会社は少ない気がします。同調圧力など一切気にせず、他人のアドバイスも一切無視して、自分が信じる世界を実現するための革命に命をかけるといった感じです。これから起業する人、起業したての人には、目線を上げてくれるポイントや新たな気づきがいくつもあると思います。ただ、内容が過激すぎるので、同じような経営を日本で実践するのは危険です。単純にまねをするのではなく、その本質、自分自身が本当に信じることを実践することがポイントなので、自分自身がパンクでなければパンクでない経営論があるはずです。経営とはどこまで行っ...
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8月 31, 2022
良い意思決定のために「Invent & Wander」 ジェフ・ベゾス
言わずと知れた世界的経営者、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏自らの言葉による初めての本です。過去の発言や、著述、インタビューなどを集めたもので、すべてジェフ・ベゾス氏自身の言葉で、その思考に触れることができます。自分の場合は、アマゾンのようなスケールする会社を目指していないけれど、その経営哲学からは学ぶことがあると思い購入しました。アマゾンの成長を支えてきた経営哲学やジェフ・ベゾスの行動原則は初めて聞くものではありませんが、非常に高いレベルでやり切ることはできないものばかりです。大組織になっても創業者のDay oneカルチャーが少なくともマネジメント層には浸透していることが強いのではないかと感じました。本の内容は実務的な話よりも哲学的なので、経営者の方やマネジャーレベルの方に特におすすめの本です。以下、印象に残った点とコメント。後戻りできない意思決定に時間をかけるべきだが、最後は体力勝負になってしまうことがある。現場で長く議論されていることは、上に上げるべきだ。意見が分かれることを意思決定するのがマネジャーの仕事であり、「この方向性でいく。反対の人もコミットしてくれ」と伝えるのだ。上司とし...
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8月 29, 2022
新たな観光ビジョン「この旅館をどう立て直すか」 瀬戸内デザイン会議
著名なデザイナーである原研哉さんを中心に設立された日本の「観光」という産業の未来について話し合う瀬戸内デザイン会議。「ものづくりから価値づくりへ」をスローガンに、観光業の未来について議論している本です。前半は知識人による提言。後半は厳島に実際に存在する旅館を立て直すプランを提案するケースステディという構成になっています。前半の知識人による提言は専門家の意見だけあって独自の切り口で建築や観光を語っており、実務というよりは哲学的な考え方に触れるという意味で楽しく読めました。後半のケーススタディは、3グループに分かれて提案をするのですが、HIDAIIYOとして日々取り組んでいることなので自分事として読め、実務的な観点から楽しめました。提案内容に関しては、旅館リニューアルによる富裕層誘致にフォーカスが当たっている内容という印象だったのですが、島の観光地としての全体戦略が語られ、その中で富裕層向け宿泊施設がどう位置付けられているのかという観点が欲しかったなと思いました。富裕層の集客は今後間違いなく力を入れるべき点ですが、将来それにかかわる人はほんの一握りです。観光客も量より質と言われていますが、ある...
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8月 29, 2022
認知がすべて「最強知名度のつくり方 西村誠司」
いま日本で勢いのある会社といえば、エクスコムグローバル社が頭に浮かぶ方も多いと思います。いもとのWifiと聞けば、知らない方は少ないのではないでしょうか。同社の代表 西村誠司さんの初の著書です。西村さんは名古屋市立大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社されました。 1995年、退社してインターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立され、社長に就任。いもとのWifi(海外用レンタル携帯電話事業)で事業を軌道に乗せることに成功させます。しかし待ち受けていたのは新型コロナウイルスによる売上消滅。ここであきらめずにもの凄い速さで「にしたんクリニック(PCR検査事業)」を立ち上げ、業績をV字回復させました。その軌跡、代表の経営哲学が詰まった本です。この本の特徴として、マーケターではなく経営者が語るマーケティング論ということです。マーケターが語るマーケティング本は論理展開が明確で、ほぼ間違いなく市場調査やマーケティングMIX(Product, Price, Place, Promotion)の重要性が書かれています。しかし西村代表は直感型の経営者(動物的嗅覚という感じかもしれません)で、理論よりも行動を...